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3PCA 26 日目: Related Website Sets

Intro

このエントリは、 3rd Party Cookie Advent Calendar の 26 日目である。

今日からは、 Privacy Sandbox の「広告」以外の API を解説していく。

同一組織の別ドメイン

グローバル企業であれば、各国の ccTLD でローカライズされたサービスを提供するのは一般的な運用だ。

  • google.co.jp
  • google.co.uk
  • google.de
  • google.fr
  • etc

他にも、例えば用途毎にドメインを分ける運用も一般的だろう。

  • google.com
  • googleusercontent.com
  • fonts.gstatic.com
  • etc

また、ドメインは全く別だが、同一組織の運営する別ブランドの場合もあるだろう。

  • office.com
  • live.com
  • microsoft.com
  • etc

これらは全て Cross Site だ。

同じ運営母体(Party)でありながら、その全てが 3rd Party Cookie で連携しており、それが塞がれると全てが連携できなくなる。

この制限を緩和するために提案されたのが、 Related Website Sets だ。

もともとは First Party Sets と呼ばれ、名前が変わったのが Related Website Sets だ。

これは、「このドメインに、このドメインが関連している」という情報を、 JSON で定義する。

{
  "primary": "https://primary.com",
  "associatedSites": ["https://associate1.com", "https://associate2.com", "https://associate3.com"]
}

そして、それを GitHub のリポジトリに PR して、許可されると以下の JSON にマージされる。

Chrome はこれを読み込んで、ドメインの関連を認識するのだ。

一般に公開されることで、他の実装も使えること、そして衆目に晒すことで監視になることを目的としている。

ちょっと前は 2,3 個しかなかったが、流石に少し登録が増えてきたようだ。

もちろん、無尽蔵に登録できるわけではなく、様々な制限はあるが、それでも全く無いよりは良いため、登録が増えているのだろう。

ドメインの関連: Same Origin/Same Site/Schemeful Same Site/Subset/3rd Party の違い

Storage Access API

認識されると無制限で Cookie が読めるというわけでは無い(First Party Sets のころはそうだった気がする)。

RWS ではどうなるかというと、 Storage Access API で prompt が出ずに Cookie を取得できるようになる。

もし RWS に対応してないブラウザでも、 SAA に対応していれば prompt を経て Cookie が取得できる点で、互換性がある設計とは言えるだろう。

これで、例えば認証連携のような場合は <iframe> から SAA を呼ぶことで、ユースケースの継続ができる可能性が増える。

一方、 CDN から画像などを取得するケースでは、 SAA が呼べない。そこで、 Top Level Window 側で CDN のための SAA を取得するための拡張 API が追加されている。

document.requestStorageAccessFor("https://cdn.example.com")

Standard Position

Firefox, Safari 共に First Party Sets 時代から反対している。

We believe the definition of first party should be clear and understandable to users,

web developers, and publishers, and thus ideally it should be based only on the top-level URL.

While we can't quite do that today because it isn't compatible with all sites,

we'd like to move towards doing that, rather than standardizing a mechanism that moves away from that. See more details.

We have already implemented partitioning of state and storage by top-level site.

We think that is where the web platform should be.

確かに、多くのドメインを持っているサービスにとって、全ての連携が切れるのは問題だろう。

しかし、それを個別の API に落とし込むならまだしも、完全に迂回できる手段を用意するということは、他のブラウザにとって看過し難いことは容易に想像できる。

したがって、この JSON が読み込まれる実装がこの先増えるかは疑問だ。

また、あらゆるサービスのドメインをリストにしていくというのは Public Suffix List と同等の運用になる。

PSL は Mozilla 発だが、今はコミュニティ運営されており、非常に負荷が高い割にクリティカルなソースなので度々問題になっている。

それを知っていながら、これと同じ運用を新たに行おうとすること自体が、うまくいくのかは個人的に疑問だ。

また、そのリポジトリが Google Chrome 以下にあり、マージは Google の人間が行なっていることになる。

一つの組織が独自に審査し、それを特例として認めているとみなされかねないこの JSON の扱いは、これまでの Web の常識からすると、かなり特殊なものと感じられる。