created_at
updated_at
tags
toc
headings

3PCA 27 日目: FedCM

Intro

このエントリは、 3rd Party Cookie Advent Calendar の 27 日目である。

今日は、散々壊れるユースケースとして解説してきた「認証連携」をカバーする FedCM について解説する。

Federated Credential Management

認証連携

あるサイト(RP)の認証を別のサイト(IDP)の認証で行いたい場合、両者の連携は 3rd Party Cookie で行われてきた。

例えば、 RP に IDP を <iframe> で埋め込み、 IDP に対するログイン済みの Cookie があれば、その情報を JS で RP に渡して認証済みにするといった構成だ。

これは、 <iframe> の中が Partition されているため、 SAA などを使わない限りアクセスできなくなった。 SAA が入る前の ITP 対策としてよく行われていたのは、一旦 IDP のページに遷移し、そこでジェスチャを発生させ、認証結果をクエリに付けて RP にリダイレクトバックする方法だった。詳細は過去の記事で解説している。

これは SSO などでも使われており、 3rd Party Cookie を用いたユースケースとしてはかなりポジティブなものとして捉えられている。

FedCM API

このユースケースと、関連する認証周りをそのままブラウザ API に落とし込んだ提案として WebID があった。今は名前が変わって FedCM になっている。

簡単に言えばブラウザに対して IDP に対するログインの処理を委譲できる。もしログイン済みでなければ IDP のログイン画面を表示し、そこからログインができる。(画像は Google のドキュメントから引用)

fedcm-login-popup

ブラウザが IDP に送信するリクエストには Cookie が付与されるため、セッションの有無で認証を連携することができるのだ。もしログイン済みなら、そのアカウントをブラウザの UI で表示し、選択することができる。ブラウザのネイティブ UI だが、多少のカスタマイズも可能だ。

FedCM Account Chooser

これを RP 側で呼び出すには、基本的には JS を多少呼び出せば対応できるため、 RP 側のコストはそこまで高くはないだろう。 API は Credential Management API の拡張として定義されている。

const credential = await navigator.credentials.get({
  identity: {
    providers: [
      {
        configURL: "https://idp.example/config",
        clientId: "https://rp.example",
        nonce
      }
    ]
  },
  mediation: "optional"
})
const { token } = credential
console.log({ token })

この API を呼び出すと、ブラウザは裏で IDP にリクエストを送信し、必要な情報を収集する。そのため、IDP 側は FedCM のための /.well-known エンドポイントなどを追加する必要がある。

既存の実装の上に FedCM とのダンスのための口を追加するような対応が必要になるだろう。

まだ chrome://fedcm-internals が無いため、ブラウザが裏側で行なっている処理が見えにくく、エラーでハマるとデバッグが面倒だ。

iframe からの呼び出し

FedCM は <iframe> の中からも呼び出すことができる。

<iframe src="https://embedded.example" allow="identity-credentials-get"></iframe>

これは、例えば YouTube を埋め込んでいるがログイン済みにならず、課金しているのに広告が出てしまうといったケースをカバーできる可能性がある。

つまり、認証を繋ぐだけであれば、 SAA や CHIPS に頼らずともユースケースを実現できる可能性がありそうだ。

ただ、これがどこまでどういった制限をもっているのかは、正直まだ筆者にもあまりわかっておらず、実際に使っているケースもまだ見てないため、今後検証したい。

Standard Position

認証連携というユースケースがポジティブに捉えられているため、各ブラウザのポジションも悪くない。

まず Mozilla は Positive だ。

コメントは珍しく長いので引用は割愛する。

次に Webkit だが、まだポジションは決まってない。 FedCM に関する複数のポジションリクエストはあるが、態度を保留している。

ただ、 Standard Position が webkit-dev で問い合わせられていた頃は、 Positive な返事があった。

We are generally supportive and interested in working together to make this coexist well with passkeys.

Apple も "Sign In with Apple" を持っているため、ユースケース自体は認めているのだろう。