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Non AMP SXG による Prefetch 対応と AMP 提供の停止

Intro

本サイトを (Non AMP) SXG に対応した。

これにより、 Google のモバイル検索では、結果を表示した時点でこのサイトの SXG が Prefetch され、結果を選択したら Cache から素早く表示されつつ、 アドレスバーにも本サイトのものとして表示される。

この、 Non AMP SXG 対応にあたって、本サイトの AMP の提供も停止することになった。

移行の作業ログと、関連する流れについて記す。

(Non AMP) SXG

SXG については過去に解説した。

本サイトでは AMP SXG に対応しており、 Google Search からの AMP ページへの遷移には SXG が取得され、本サイトのドメインが表示される。

今年の 4 月に、 AMP だけでなく通常のコンテンツであっても SXG を配信すれば Google Bot がそれを取得し、 Google Search のモバイル検索結果で Prefetch が行われるようになった。

これにより、モバイル検索結果を表示した時点で SXG がブラウザに読み込まれ、結果をクリックしたら、リクエストを投げる代わりにキャッシュから HTML を表示するだけで済むため、検索流入のユーザに対して、初期表示のパフォーマンス向上が期待される。

Google はこれを AMP SXG と対比して Non AMP SXG と称しており、本サイトでもその使い分けを採用するが、実態はまさしく SXG そのものだ。

SXG の配信

SXG の配信は、コンテンツを SXG に変換するだけではなく、 Content Negotiation の対応や Validity URL の提供など、いくつか対応が必要となる。

また、 SXG はファイル自体に期限があるため、 gen-signedexchange といったツールで静的に作る場合は更新が必要となる。

今回はこうした処理を全て肩代わりしてくれる Web Packager Server を用いることにした。

Web Packager Server

Web Packager Server は Web Packager に含まれる webpkgserver コマンドを用いる。

このコマンドはサーバを起動し、リクエストに応じて SXG を生成して返すため、フロントサーバから Proxy するように構成する。

webpkgserver

webpkgserver は go get ではうまく動かなかったため、 README にある通りソースからビルドした。

git clone --depth 1 https://github.com/google/webpackager
cd webpackager/cmd/webpkgserver
go build .

これで webpkgserver コマンドが生成される。

実行には設定ファイルの toml を引数に渡す。

$ webpkgserver --config webpkgserver.toml

webpkgserver.toml

設定ファイルは、同梱されている webpkgserver.example.toml を修正する。

ほとんどデフォルトが使えるため、 Port と SXG 用の証明書、 Domain あたりを気をつければ良いだろう。

[Listen]
  Port = 11000

[Server]
  DocPath = '/priv/doc'

[SXG.Cert]
  PEMFile = '/keys/sxg/blog_jxck_io_full.crt'
  KeyFile = '/keys/sxg/blog_jxck_io.key'
  CacheDir = '/tmp/webpkg'

[SXG.ACME]
  Enable = false

[[Sign]]
  Domain = 'blog.jxck.io'

これを引数にするだけでサーバは起動する。

ローカルで起動した時点で、動作の確認は以下のように行うことができる。

export URL="https://blog.jxck.io/"
curl -s --output - -H 'accept: application/signed-exchange;v=b3,*/*;q=0.1' http://127.0.0.1:11000/priv/doc/$URL > dump.sxg
dump-signedexchange -i dump.sxg

Routing

このサービスに対して行うべきルーティングは 3 つだ。

  • webpkgserver に直接アクセスできないようポートを閉じる
  • /webpkg を webpkserver に転送
  • Content Negotiation で SXG を返す場合は /priv/doc をつけて proxy
  • それ以外は proxy しない

Content Negotiation

基本的にはリクエストヘッダに Accpet: application/signed-exchange;v=b3 が付与されている場合、 Web Package Server に転送すれば良い。

しかし、 Google の Bot だけでなく、 Chrome も現状このヘッダをデフォルトで付与しているため、単にこのヘッダの有無だけを見てルーティングすると、ブラウザからのリクエストにも SXG を返すことになる。

これについては Q value を参照するように ドキュメント に書かれている。

具体的には Chrome と Google Bot の付与する Accept は以下のように異なる。

# Google Bot
Accept: text/html,application/xhtml+xml,application/signed-exchange;v=b3,application/xml;q=0.9,*/*;q=0.8

# Chrome 90
Accept: text/html,application/xhtml+xml,application/xml;q=0.9,image/webp,image/apng,*/*;q=0.8,application/signed-exchange;v=b3;q=0.9

SXG に注目すると Chrome は Q value を HTML などよりも下げているが、 Google Bot は Q value を下げずに HTML と同等にしていることがわかる。

ドキュメントでは、 Google Bot は Q value を付与しないことで優先度を下げないため、 Q value の有無が判断材料になると書かれており、それを Nginx で実現する正規表現の例が書かれている。

しかしドキュメントの正規表現が気に入らず、また本サイトでは h2o の mruby handler で対応するため、以下のように否定先読みで実現することとした。

if /application\/signed-exchange;v=b3(?!;q=)/.match(env["HTTP_ACCEPT"])
  # reproxy to backend wepkgserver
  next [307, {"x-reproxy-url" => "http://127.0.0.1:11000/priv/doc/https://blog.jxck.io#{path}"}, []]
else
  # fallthrough
  next [399, {}, []]
end

ここまでが成功しているかは、以下のようにテストをすることができる。

export URL="https://blog.jxck.io/"
curl -s --output - -H 'accept: application/signed-exchange;v=b3,*/*;q=0.1' $URL > dump.sxg
dump-signedexchange -i dump.sxg -signature

/webpkg

webpkgserver は SXG に必要な Certificate URL を自動で提供してくれる。

そのパスは /webpkg/cert/#{base64} となっているため、ここへのリクエストはそのまま転送すれば良い。

"/webpkg":
  proxy.reverse.url: "http://127.0.0.1:11000/webpkg"

dump した sxg の中に cert url があるためそこから URL を取得すると以下のようにテストできる。

# dump certurl
curl -s --output - https://blog.jxck.io/webpkg/cert/g8zY1NBH4DQt9qIWOWBqLWvs6jAnJmURAtNRc2WChDE > cert.cbor
dump-certurl -i cert.cbor

動作検証

Debug

curl でテストしても良いが、デプロイした後ならば Chrome でアクセスして Devtools で確認すると詳細がデバッグできる。

しかし、今回の設定では Chrome のデフォルトの Q value がついた Accept ヘッダでは SXG が取得できないため、 ModHeader などを用いて Q value を無くすよう上書きする必要がある。

その状態でアクセスし、成功すれば以下のように SXG が確認できる。

まず、 Network の Timeline 上は SXG のレスポンスと CBOR リクエストが続き、 SXG から取り出された HTML が取得されている。

SXG レスポンス、 CBOR レスポンス、 SXG から取り出された HTML の順に取得されている Devtools Timeline の図

SXG の Preview タブを見ると、 Signature や Certificate も正しく解釈されていることが確認できる。

SXG の Signature や Certificate が正しく解釈されている Devtools の Preview の図

Google Bot

この状態で放置しておくと GoogleBot がクロールしに来た際に、 SXG の Content Negotiation に成功して SXG をクロールしていく。

SXG が Google の Cache に乗ったかは、以下のような規則で生成したキャッシュ URL に直接アクセスすれば確認できる。

AMP SXG と Non AMP SXG

本来はこれで Google Search Result に反映されて、 Prefetch が埋め込まれるはずだった。

しかし、本サイトは既に AMPAMP SXG に対応しているため、モバイルの検索結果では AMP がヒットし、 AMP SXG がリンクされている。

AMP SXG と Non AMP SXG を両方デプロイした場合、 Google Search Result では AMP が優先される

どうやら Non AMP SXG がクロールされても、同時に AMP および AMP SXG に対応している場合は、現状 AMP 側が優先されるようだ。

おそらく両方に対応しているサイト自体が他に無いため、ここをコントロールする情報は無く、今後 Non AMP SXG の方が優先されたりする可能性も無くはないが、まったく未定な状態となりいつまでたっても動作検証ができない。

CWV や SXG 、さらにこれから展開される予定の Prerender2 などを見据えれば、 AMP 自体は特別扱いされなくなっていくと理解しているため、そもそも AMP はどこかでやめるつもりでいた。

Bento AMP が気にるので、念のためにコンテンツは残すが、これを機に AMP の提供を停止することにした。

AMP の停止

AMP をやめる方法は基本は以下だ。

  • canonical html から <link rel=amphtml> を削除
  • amp html へのリクエストは canonical html にリダイレクト

デプロイ上はこれだけで、後はクローラが来ればしばらくして消えるかと思ったが、なかなか検索結果からは消えなかった。

試しに 1 つ Search Console から AMP URL を削除するようにリクエストしたが、それでもなかなか反映されなかった。

結果、以下にある削除リクエストを実施した。

一晩放置したところ、検索結果から AMP が消え始めた。

Search Result

検索結果から AMP が消え、モバイルでも通常の HTML が表示されるようになった。

また、ページの DOM 中に <link rel=prefetch> が挿入されていることが確認できる。

Non AMP SXG が Prefetch されている

これにより、検索結果を表示した時点で HTML は Google の SXG Cache から取得されている。

検索結果を表示した時点で HTML は Google の SXG Cache から取得されている

実際に検索結果に遷移すると、 HTTP Request は筆者のサーバには発生せず、 Prefetch された HTML から展開されていることがわかる。

検索結果に遷移すると Prefetch した HMTL が展開されている

このとき(スクショでは切れているが)、アドレスバーには SXG Cache の URL である https://blog-jxck-io.webpkgcache.com/ ではなく、 SXG を検証した結果として https://blog.jxck.io が表示されている。

Outro

本サイトを Non AMP SXG に対応し、 Google のモバイル検索結果で Prefetch されることを確認した。

本来、そこで発生したパフォーマンスの改善を CWV を指標として測るべきでもあるが、ローカルの Lighthouse はリロードベースでの測定しかできず、本サイトのアクセス数では Field Data が得られないため Page Speed Insight などでの変化も見ることができない。

各 API で色々工夫すれば測れるかもしれないが、本サイトは Origin が十分に速いため、有意な数値差も期待できず、検証はここまでとした。

また、今回ここで AMP をやめることは本来意図してなかったが、ここで不要になったように SXG も AMP の遺産の 1 つとも言え、すでに AMP はある程度の役目を終えつつあるだろう。

それについて書いたところ長くなったので、いずれ別途記事にまとめたいと思う。

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